奏者と一体になり完成する楽器
こんにち爆発的なブームとなりつつある予感も否定できない、鼻笛。
もちろん、その功績の多くは先人たちの普及啓発活動の賜物であり、頭の下がる思いですが、マンガ「ピューと吹く!ジャガー」を鼻笛史から外すわけにはいきません。
こまかいマンガの解説はしないが、劇中に鼻笛が登場する回があります。
特筆すべきはその扱われ方です。
主人公・音楽学校の「ふえ科」講師であるジャガーに差し向けられる、刺客(みんな笛をあやつる)の一人として、鼻笛使いの「クサ・千里」が登場しますが、鼻笛使いを名乗りながら、なんと彼は「鼻笛は笛じゃないんじゃないか」と葛藤しているのです。
おおおおなんたることか!ギャグマンガで、存在自体がギャグとして扱われているこの事実…!!
だがしかし同士諸君、早まってはいけません。いくら鼻笛を愛しているからといって、集英社に抗議をするのは間違いなのです。
なぜなら、ここにこそ鼻笛の最大の魅力といっていい点が隠されているのだから。
「…っていうか、これ、楽器なのか?」そう、鼻笛を手にした多くの人がそう考えるかもしれない。実際に、鼻笛は、楽器としては不完全なのかもしれません。
ここで心の師・口琴や数々のなぞ楽器を操る、倍音ケイイチさんの言葉を借りましょう。
「鼻笛は、管楽器で言うところの『管』を、人間の体が担っているのだろう。つまり鼻笛を演奏するとき、体は楽器の一部となる。」
(※ここで補足すると、鼻笛は、簡単に言うと、鼻息を口にすべらせて口腔内で音を響かせるための道具である。角度・効率よく鼻息を口に向けるためだけの形をしている。もしあなたが鼻笛奏者なら、鼻笛の位置に手を当てて、鼻笛なしに、小さな音が出せる筈だ。)
楽器として足りない、のではない。
鼻笛は奏者を得て、はじめて楽器になる楽器なのだ。
もっといえば、人間を楽器として鳴らす装置であるといえましょう。
力を合わせ、高めあい、響く。そしてあなたが得るものは、笑いであったり喝采であったり、ともに楽しく過ごす時間だったりするでしょう。
人類の歴史で、ポケットに入れておける、これだけの能力を持った道具があっただろうか。すくなくともわたしは知りません。
本日のまとめに、当協会から諸君にむけたメッセージを送ります
鼻笛はあなたを求めている楽器である。いざ吹かんかな踊らんかな。
2009.5.29
※今回は、ハワイのフルートっぽい「鼻で吹く笛」はのぞいて書いてます。